主な研究内容
堆積物や地層に保存されている火の痕跡物を通して、過去の山火事や燃焼を伴う人間活動の歴史を明らかにする研究を進めています. <テーマ1> 微粒炭を用いた数万年オーダーの気候変動と山火事の関係 微粒炭とは、地層や堆積物中に含まれる数mm以下のミクロサイズの炭のことです.山火事などが起こると多量の微粒炭が形成され、その一部は湖や池へと運ばれ堆積物に含まれます. 結果, 山火事が多かった時代の堆積物に多くの微粒炭が含まれるのに対し、山火事が少ない時代の堆積物には、ほとんど微粒炭は含まれません.堆積物中の微粒炭の多少やその特徴を調べることによって氷期・間氷期サイクルなどの気候変動などに伴い、山火事の頻度がどのように変化したのか、また、どのようなものがどのように燃えていたのかを明らかにすることができます. <テーマ2> 微粒炭を用いた火入れの歴史と環境変遷 微粒炭は、自然発生する山火事だけでなく、人為的な山焼きなど(若草山の山焼きが有名)によっても発生します.数百年から数千年下に堆積した地層に含まれる微粒炭や微化石(花粉や植物珪酸体)を研究することによって、山焼きの歴史や草原の歴史など、火の環境への影響を歴史的に明らかにしようとする研究です. <テーマ3> 微粒炭の堆積物・土壌中での消失・変質過程の研究(タフォノミー) 微粒炭が土壌中や堆積物中でどのように変質するのか、どのような微粒炭が堆積物や土壌に残りやすいのかについて、光学的・化学的に明らかにしようとする研究です. <テーマ4> 化石燃料使用により生成されるフライアッシュ粒子を用いた環境汚染史 フライアッシュ粒子とは、火力発電所などの産業活動により大量の化石燃料が使用される際に生成されるミクロサイズの粒子のことです.堆積物中には、主に炭素からなる球状炭化粒子と主にケイ素からなる球状灰粒子が保存されます.堆積物中のこれらの粒子の量や化学的特徴を調べることにより、過去の大気環境や燃焼物の特定を行い、これらの変遷を解明します. <テーマ5> 球状炭化粒子の化学組成分析による粗粒粒子の越境汚染評価 産業活動の化石燃料使用により生成される球状炭化粒子は、その燃料種(石油・石炭)や産出地域などによって化学組成が異なります.こうした違いを用いて、日本で検出される球状炭化粒子の発生地域を特定しようとする研究です.堆積物だけでなく、大気降下物を用いた研究も行っています.